コラム
「仕事」と「志事」
変わらぬ毎日の中での出来事だった。
数年前。まだ小学生になったばかりの息子に
『パパのしごとはなに?』
と聞かれた。
息子はどんな仕事をしているのかを質問している。
簡単に答えることはできるが、『仕事』として答えたくはなかった。
『しごと』については少しこだわりを持っている。
私は自分の『しごと』を『仕事』として考えていない。
『仕事』としてしまうとお金を稼ぐためにすること、単純に消化するだけのもの
そんなことを私はしたくないのだ。
そう思うようになったのにはきっかけがある。
私が尊敬する方に『仕事』ではなく『志事』をしろと言われたことがある。
『志事』
漢字がもたらす意味と同様に志を持って臨む事
信念を貫ける『しごと』
それが『志事』
私は息子に言った。
『お客様に喜ばれ感動してもらい、応援してもらう事がパパのしごとだよ』
考え方を伝えるような言い方で答えになっていなかったかもしれない。
小学生の息子には理解できなかったかもしれない。
でも息子は嬉しそうに
『ぼくも大きくなったらパパのしごとをてつだいたい』と言った。
その表情に私も嬉しさを感じた。
私の答えた『しごと』のやりがいや楽しさが、わずかでも伝わった気がしたのだ。
何年後か、もし息子が仕事を手伝うと言ってくれたら
『しごと』の意味をしっかりと教えたい。
私自身の考えを押しつけるつもりはない。
だが『志事』の意味をわかってもらえたなら、息子はきっとすばらしい『志事』をするようになるだろう。
契約をもらう事、お金をもらう事が『しごと』でないことを。
心を込めて伝えてあげたい。
息子に、そして何よりお客様に私たちの作品を胸を張って
見てもらえるように。
それが私の志事。